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東京高等裁判所 平成9年(ネ)363号 判決 2000年11月29日

控訴人

甲野花子

右訴訟代理人弁護士

水口洋介

伊藤和子

生駒巌

飯田幸光

井上幸夫

神田高

被控訴人

メレスグリオ株式会社(旧商号・キノ・メレスグリオ株式会社)

右代表者代表取締役

永吉實良

右訴訟代理人弁護士

田中克郎

松尾栄蔵

千葉尚路

森﨑博之

荻原雄二

升本喜郎

寺澤幸裕

長坂省

岡田英之

五十嵐敦

吉野正己

柏尾哲哉

玉井真理子

右千葉尚路訴訟復代理人弁護士

藤井基

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

二  控訴人が被控訴人との間において労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

三  被控訴人は,控訴人に対し,平成5年5月以降本判決確定の日まで毎月25日限り34万8700円及びこれに対する各支払期日の翌日以降支払済みまで年6分の割合による金員並びに34万8700円及びこれに対する平成6年7月20日以降支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

四  控訴人の,労働契約上の地位確認の請求中,その余の請求を棄却し,本判決確定の日の翌日以降の期間の賃金(遅延損害金を含む。)の支払請求にかかる訴えを却下する。

五  訴訟費用は,第一,二審とも,被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  控訴人が被控訴人の営業本部(東京都渋谷区渋谷<以下略>)において勤務する労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

三  被控訴人は,控訴人に対し,平成5年5月以降復職するまで毎月25日限り34万8700円及びこれに対する各支払期日の翌日以降支払済みまで年6分の割合による金員並びに34万8700円及びこれに対する平成6年7月20日以降支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

(略語等は,特に断わらない限り,原判決の例による。なお,原判決中,「被告代表者」は,当時の被控訴人代表者渡邊眞一を意味し,本判決においては,「渡邊社長」と表示する。)

一  本件は,被控訴人の平成5年当時の営業本部(東京都渋谷区渋谷<以下略>所在。平成8年11月,本社を同所に移転した。)に勤務していた控訴人が,当時の本社・玉川工場(埼玉県比企郡玉川村<以下略>所在)への本件配転を命じられてこれを拒否し,本件懲戒解雇をされたことから,本件配転命令は無効であり,右懲戒解雇も解雇権の濫用で無効であるなどと主張して,営業本部において勤務する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と,平成5年5月以降復職するまで毎月34万8700円の賃金の支払及び平成5年12月分の賞与の支払(いずれも遅延損害金を含む。)を求めた事案である。

原審は,本件配転命令は有効であり,本件懲戒解雇も解雇権の濫用とは認められず有効であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。

当裁判所は,本件配転命令は有効であるものの,本件懲戒解雇は懲戒権の濫用であると判断し,控訴人が被控訴人との間において労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求を認容し,平成5年5月以降本判決確定の日まで毎月34万8700円の賃金の支払及び平成5年12月分の賞与の支払(いずれも遅延損害金を含む。)を被控訴人に命じ,営業本部における労働契約上の地位の確認請求部分を棄却し,本判決確定の日の翌日から控訴人が復職するまでの間の賃金の支払請求については,将来給付の訴えの利益が認められないと判断してこれを却下した。

二  争いのない事実等及び争点は,当事者の当審における主張を次項以下に付加する外,原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」の「一 争いのない事実等」,「二 争点」に記載のとおりであるから,これを引用する。

三  控訴人の当審における主張

1  本件配転命令の無効事由(追加)

控訴人は,M団地駅(東武伊勢崎線)午前6時03分発の電車に乗れば,高坂駅(東武東上線)に午前7時31分に着き,被控訴人の送迎バスを利用することができるが,次発の電車では,高坂駅着が午前7時46分となり,送迎バスに間に合わないため,始業時間(午前8時30分)の2時間30分前に自宅を出る必要があった。

2  本件懲戒解雇の無効事由(追加)

被控訴人は,控訴人に対し,次のとおり,転勤先の業務内容及び通勤方法について十分な説明を怠り,しかも,通勤時間の緩和策等を考慮しないまま本件配転を命令し,その後,たった1回のしかも不誠実な団体交渉を打ち切って本件懲戒解雇をしたもので,本件懲戒解雇は,解雇権の濫用であり,無効である。

(一) 控訴人が,平成5年2月15日退職勧奨を断ったところ,渡邊社長は,同月16日控訴人に対して本件配転を打診し,控訴人が転勤先での業務内容を尋ねたのに対し,総務としか説明しなかった。

(二) 控訴人は,同月24日渡邊社長から,本件配転を命じられ,業務内容を尋ねるとともに,通勤できない旨答えたが,渡邊社長は,黙り込むだけで,送迎バス等の通勤手段について控訴人に何らの説明をしなかった。

(三) 控訴人は,同月26日渡邊社長から,配転辞令を渡されたが,転勤先での業務内容,通勤手段について,何らの説明がなく,その受領を拒否した。

(四) 控訴人は,同年3月12日取締役会に呼び出されて,渡邊社長から,本社・玉川工場の総務に行って貰う旨命じられ,本社・玉川工場の総務には人がいるし,自分が担当している仕事と異なると述べたが,渡邊社長を含め取締役会出席者からは,何らの説明がされなかった。

(五) 控訴人が加入した組合の団体交渉の申入れに対し,被控訴人は,これに応じず,同年3月30日,双方の選任した弁護士により交渉が行われた。その際,被控訴人の弁護士は,控訴人の配転は本社・玉川工場に総務の機能を移転するためであると繰り返すにとどまり,控訴人の転勤先での業務内容を説明できず,控訴人の弁護士から本社・玉川工場への通勤方法を尋ねられても,回答できなかった。そこで,控訴人の弁護士は,重要なことに答えられないのは,控訴人を退職に追い込むための配転にほかならないとしてその撤回を求めた。

(六) 同年4月2日,2回目の弁護士同士の交渉が行われ,被控訴人の弁護士は,配転の理由として,総務の主力を玉川工場に移すこと,玉川工場の経理の小峰が退職すること,配送センターが玉川工場に移転するので仕事が増えることを説明するとともに,通勤方法について,高坂駅を午前7時45分に出発する送迎バスがあることを初めて説明した。

(七) 同月14日,被控訴人と組合との間で,第1回団体交渉が行われ,組合が控訴人は通勤に2時間30分要するとして,本件配転命令の撤回を求めたのに対し,渡邊社長は,1時間40分くらいと答えたものの,右送迎バスの出発時刻を調整できることなどについて説明することもなく,団体交渉を30分程度で打ち切り,控訴人が本件配転に応じない場合の対応についての組合の質問に対し,まだ決まっていないと答えた。ところが,被控訴人は,翌15日午前8時20分ころ営業本部に出社した控訴人に対し,本件懲戒解雇を通告した。

(八) この間,控訴人は,代理人間の交渉や,団体交渉という手だてを尽くして,積極的にかつ誠意をもって交渉に臨み,交渉中のため暫定的に営業本部に出社し,従来どおりの勤務をしていた。

四  被控訴人の反論

1  本件配転命令について

控訴人は,午前6時20分に自宅を出て,M団地駅午前6時28分発の電車に乗り,高坂駅を午前7時45分に出発する被控訴人の送迎バスに乗車することができ,午前8時06分に本社・玉川工場に着くことができた(通勤時間,片道1時間46分)。

2  本件懲戒解雇について

(一) 被控訴人は,弁護士同士の交渉の際に,配転の理由について,控訴人が小峰の後任で,業務内容は変わらないこと,配送センターが玉川工場に移転して業務が増えることを説明するとともに,高坂駅を午前7時45分に出発する送迎バスがあることを説明した。

(二) 控訴人は,弁護士同士の交渉の結果さえ聞こうとせず,被控訴人と誠実に交渉する意思自体を欠如していた。本件において,控訴人が配転拒否の姿勢に固執せず,被控訴人側の説明を聞き,話合いに応じていれば,配転に伴って控訴人に生じる不利益について,解決を図ることも可能であったが,控訴人において話合いに応じなかった。

第三当裁判所の判断

一  事実の経過

本件配転命令から本件懲戒解雇に至る経過につき,次の事実を認めることができる。

1  原判決の事実及び理由の「第三 判断」の一の1から3まで(原判決7枚目裏末行から10枚目表初行まで)に記載の事実認定のとおりであるので,これを引用する。但し,次のとおり,補正する。

(一) 原判決8枚目表2行目の「<証拠略>」の次に「<証拠略>」を,同3行目の「原告本人」の次に「(原審及び当審)」を,同4行目の「被告代表者各尋問の結果」の次に「,弁論の全趣旨」をそれぞれ加える。

(二) 同9枚目表2行目の「考え,」の次に「平成5年2月8日」を加える。

2  控訴人は,本件配転当時,長年の希望がかなって入居した肩書住所地に所在する公団の賃貸住宅に居住し,片道約1時間を要して営業本部(東京都渋谷区所在)に通勤しており,本件配転に従えば,最短経路である東武伊勢崎線(M団地駅から新越谷駅まで),JR武蔵野線(南越谷駅から北朝霞駅まで),東武東上線(朝霞台駅から高坂駅まで)及び被控訴人の運行するマイクロバス(高坂駅から本社・玉川工場まで。所要20分)を利用して通勤し,始業時刻の午前8時30分までに着くには,乗換えに要する時間に余裕を見込むとM団地駅午前6時15分発の電車及び前記経路を経て高坂駅午前7時45分発のバスを利用することを要し,通勤に片道約2時間を要することとなる(M団地駅午前6時28分発の電車を利用しても,乗り換えを急ぐと,前記バスの利用が可能であると認められる。)。

3  控訴人は,同年3月19日,組合に加入し,組合が本件配転について団体交渉の申入れをしたが,被控訴人がこれに応じず,この前後から,上司から話しかけられると,所持するテープレコーダーにより録音を始め,控訴人からは応えなくなり,同月26日午後3時から開催された営業本部の総務部経理課の人事異動に伴う引継ぎのための会議にも,体調不良を理由に早退して出席しなかった。その後,同月30日,双方の委任した弁護士による交渉が行われ,控訴人の委任を受けた井上幸夫弁護士及び神田高弁護士は,本件配転の撤回を求め,被控訴人の委任を受けた千葉尚路弁護士及び田中克郎弁護士は,既に30名の従業員が退社したこと及び控訴人の配転が本社総務課の機能を移転するためであることを説明し,同年4月2日,千葉弁護士から,本社・玉川工場の経理の小峰が退職し,配送センターが本社・玉川工場に移転するのに伴い,仕事が増加することが控訴人の配転の理由であること,本社・玉川工場に配転となる者が控訴人を含め5名いること,高坂駅からは午前7時45分発の送迎バスの便があることについて説明がされ,控訴人は,これにより,初めて,右送迎バスの便のことを知った。控訴人は,同年4月1日以降も,営業本部に出社し,本社・玉川工場には出社せず,机,書類棚,ロッカー等の鍵の返還を求められながら,本件懲戒解雇の通告を受けるまで返還しなかった。

4  組合は,同月8日,再度団体交渉を申し入れ,同月14日,開催された初めての団体交渉において,既に30名に上る人員削減が行われ,控訴人に退職勧奨又は配転を命ずる必要がないと主張し,渡邊社長は,本社・玉川工場の人員削減を補う必要があること,控訴人が1時間40分程度で通勤することができ,本件配転を撤回する意思のないことを告げるとともに,従前控訴人が辞めて欲しければいつでも言うように述べた経緯もあって退職勧奨したことを説明し,控訴人が翌日も本社・玉川工場に出社しない場合は解雇されうる旨を警告し,交渉は進展しないまま,30分程度で終了した。

5  控訴人は,翌15日,営業本部に出社し,本件配転命令違反を理由に懲戒解雇の通告を受けた。

二  本件配転命令の効力について

当裁判所も本件配転命令は有効であると判断する。その理由は,原判決の事実及び理由の「第三判断」の二に記載のとおりであるから,これを引用する。但し,次のとおり補正する。

1  原判決13枚目表8,9行目の「片道2時間を超える」を「片道約2時間の」に改める。

2  同13枚目裏1行目の「片道2時間を超える」から同3行目の「認めがたい。」までを「自宅から片道約2時間の本社・玉川工場への通勤が不可能であったということはできない。」に改める。

三  本件懲戒解雇の効力について

1  前記一(原判決引用部分)に説示したとおり,控訴人は,本件配転命令に従わず,平成5年4月1日以降,本社・玉川工場に出社しなかったもので,被控訴人の就業規則19条所定の業務上の指揮監督に従うべき義務に違反しており,その期間も同日以降14日までに及び,懲戒解雇事由を定めた就業規則54条7号所定の「その事案が重篤なとき」に該当する。

2  しかしながら,本件懲戒解雇の効力は,左記のとおり,認めることができない。

(一) 前記のとおり,被控訴人は,本件配転により控訴人の居住地から本社・玉川工場まで,通勤に約2時間と従前の約2倍を要することとなるにもかかわらず,通勤所要時間,方法等について内示前に確認しておらず,本件配転の内示を受け,控訴人が,通勤の困難を主張して配転を拒む姿勢を示していたのに対しても,本件配転を命じた事情,通勤所要時間,方法等について説明した形跡も見あたらず,高坂駅と本社・玉川工場間に従業員のために運行させている通勤バスについて説明したのも,本件配転の発令後の同年4月2日の代理人弁護士間の交渉の際が初めてである。右事情の下では,本件配転は,被控訴人が,内示後本件懲戒解雇に至るまでの間,本件配転を受け容れるかどうかを控訴人が判断するのに必要な情報を提供せず,前記バスの発車時刻の調整等による通勤時間の若干の短縮等の容易に採用しうる通勤緩和措置も検討しないまま,発令されたと評しうる。

(二) 一方,前記のとおり,控訴人は,賃貸住宅に居住する単身者であり,住居を所有し,又は家族を抱える者に比べ,長年の希望が叶って住み始めた住居への愛着等の主観的なものを除き,住居の移転に伴う支障は相対的に少ない。また,前記のとおり,配転が権利の濫用に当たらない場合,労働者は,これを受け容れざるを得ないものである以上,配転の内示に際しては,通勤所要時間,経路,通勤緩和措置の可否,移転を要する場合の新住居の確保の見込み等必要な情報を使用者に確認するのが労働契約の一方の当事者の交渉に臨むべき態度というべきである。本件において,控訴人は,本件配転に伴う通勤事情等の変化を尋ねてもおらず,上司が話しかけようとしたのに対しても,テープレコーダーによる録音をして応答しなかったというのである。この点において,控訴人は,労働力を提供して対価を得る者としての自覚に欠ける点があるといえないではない。しかしながら,前記認定の経緯から見ると,控訴人は,退職勧奨を受けた後間もなく内示を受けたことから,本件配転が退職を迫る意図の下にされたと疑ったこともあって,やや頑なな対応をしたと窺われないではなく,本件の事情の下においては,前記認定のような,会話の録音,引継ぎのための会議への欠席,鍵の返還の遅延等の控訴人の対応も,無理からぬ事情があるということができ,これを過大に不利益に評価するのも相当とは思われない。

(三) 本件においては,被控訴人の業績の悪化に伴い従業員の削減が計画され,退職させることを予定していた控訴人が退職に応じなかったという経緯の下で本件配転が命じられた。被控訴人が,業績悪化に対処するために人員削減を図り,従業員に退職を勧奨することも,また,退職勧奨を受けた従業員がこれを断ることも,それ自体は,いずれも,責められるべき筋合いの事柄ではない。前記認定の経緯から見ると,本件配転は,被控訴人側から見れば,いわば余剰となる人員についての配転であり,十分な説明をして必要性を理解させた上で配転に応じさせようとする意欲が乏しく,控訴人が応じないで退職を選択するのであればそれも構わないとの態度で臨んだのではないかと窺われないではなく,人員削減を図ろうとする使用者の立場からは,無理からぬ事情がある。しかしながら,配転命令自体は権利濫用と評されるものでない場合であっても,懲戒解雇に至るまでの経緯によっては,配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇は,なお,権利濫用としてその効力を否定されうると解すべきである。本件においてこれをみると,前記のとおり,本件配転命令は控訴人の職務内容に変更を生じるものでなく,通勤所要時間が約2倍となる等の不利益をもたらすものの,権利濫用と評すべきものでないが,被控訴人は,控訴人に対し,職務内容に変更を生じないことを説明したにとどまり,本件配転後の通勤所要時間,経路等,控訴人において本件配転に伴う利害得失を考慮して合理的な決断をするのに必要な情報を提供しておらず,必要な手順を尽くしていないと評することができる。このように,生じる利害得失について控訴人が判断するのに必要な情報を提供することなくしてされた本件配転命令に従わなかったことを理由とする懲戒解雇は,性急に過ぎ,生活の糧を職場に依存しながらも,職場を離れればそれぞれ尊重されるべき私的な生活を営む労働者が配転により受ける影響等に対する配慮を著しく欠くもので,権利の濫用として無効と評価すべきである。

四  控訴人の各請求について

1  地位確認請求

控訴人は,営業本部において勤務する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるが,前記のとおり,本件配転命令が権利濫用に当たらない以上,同所に勤務する労働契約上の権利の確認を求める請求は理由がない。尤も,控訴人の請求は,被控訴人による懲戒解雇の効力を争うことに主眼があり,被控訴人との間で,なお労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める趣旨とも解され,右の限度においては理由があり,正当として認容すべきである。

2  控訴人の賃金の支払請求

右三に説示のとおり,本件懲戒解雇が無効である以上,被控訴人は,控訴人に対し,平成5年5月以降本判決確定の日まで毎月25日限り賃金として34万8700円及びこれに対する各支払期日の翌日以降支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金並びに賞与として34万8700円及びこれに対する弁済期を経過した後である平成6年7月20日以降支払済みまで前同割合による遅延損害金を支払う義務がある。

しかしながら,本件全証拠によっても,本判決が確定した日以降においても,なお被控訴人が控訴人に賃金を支払わない特段の事情があることを認めるに足りない。そうすると,本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払請求は,民事訴訟法135条に反し,将来給付の訴えの利益を欠くものとして却下を免れない。

第四結論

以上の次第であるから,これと一部結論を異にする原判決を本判決主文第1ないし第4項のとおり変更することとし,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 江見弘武 裁判官 岩田眞 裁判官井口実は,転補につき,署名及び押印をすることができない。裁判長裁判官 江見弘武)

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